2011年04月27日

釣りの師匠

半世紀前、小学生のわたしは、釣りに凝り出し、休みのときはいつも
釣り道具を持ち清水の埠頭の岸壁に通ったもんだった。
下手糞なだけでなく、すべて我流。
釣りをしている時間より、糸の絡みを直したり、糸を結んだりの時間のほうが長かった。
その岸壁には、いつもやたら釣りがうまい爺さんがいた。
爺さんといっても今の私ぐらいの年齢か、・・
赤銅色の焼けた肌と、全く贅肉の無い体。そして、いとも簡単に鯵をつり、適当な量
釣ったらさっさと帰っていく。
毎日顔をあわせていても、別に話をするでなく、並んで座っていた。
ある時、例によって糸をからましていると、ついに見かねた様に声を掛けてきた。
「ぼうず、ちょっとかしてみょう」昔の清水なまりで「見せてごらん」てな意味だろう。
それから、糸の絡まない方法、糸の結び方、針と糸の結び方まで教えて貰った。
その爺さんは漁師で、舟を降りてる時の暇つぶしで酒の肴を釣って居る様だった。
2~3ヶ月したら、その爺さんがぱったり来なくなった。
たぶん遠洋の舟にでも乗ったのだろうか。
いつの間にか、私の腕は上達していて、「清水港の主」などと言っていた。
確かに、学生は暇だから、春夏冬休み、土日祝日釣ってれば上手くもなるもんだ。
大人になって、その結び方を本で確認したら、「漁師むすび」という事だった。
私にとっては、その爺さんこそが、釣りの師匠だった。
金を払った訳での、スクールに通った訳でもなく。
今の子供達は、そんな師匠に出会う事があるのだろうか、
そういえば、あの師匠、その時以来ぱったりと会わなかった。
あの岸壁には10年通ったのに。
ふと、そんな事を思い出したのは、年のせいだろうか・・  


Posted by 昔のシステムエンジニア at 18:26Comments(0)日記