2010年12月29日

景色の良い人

もう15年位経つだろうか、私が尊敬する先生がなくなって、
その人は学校の先生でも、講師の先生でもなかったが、つい「先生」と
言ってしまう。ロボットを作っている会社の社長であり、ロボット工学の博士で世界的な権威でもある。
回りは尊敬をこめて「先生」と呼んでいた。
とても気さくな人で、30歳以上年下の私に「飲みにいこうぜ」と誘ってくれた。
ウイスキーは、スコッチのダブルをロックで、タバコは両切りの缶ピーを。
年齢は80歳近かったが、意気盛んで、酔うとドイツ語で歌を歌い。
アインシュタインの相対性理論の欠点を説明してくれた。(私には理解できなかったが)
痩身で背が高く、背筋を伸ばして歩く。
一度、待ち合わせの所に歩いて向かっている先生を眺めたときに、惚れ惚れしてしまった。
たぶんイギリス紳士とは、このような姿をしているのだろう。
大またで、それで静かによどみなく歩く。
それこそ80年の人生を刻んできた生き方そのものなのだろう。
そして、15年前の年末、「来年一緒に仕事するんだからしっかり準備しとけよ」
と言って別れたのが最後の言葉だった。
正月明けの初出社の日に突然亡くなった。
80年の人生をあっという間に閉じてしまった。
年末を迎えて、ふっと最後の言葉を思い出してしまった。  


Posted by 昔のシステムエンジニア at 10:10Comments(0)日記